和泉ちぬさん主宰、黒鯛プロデュース「勝手にワールドツアー」開幕直前 稽古場レポート!【後編:遠藤理史さん、和泉ちぬさん、市原康さんインタビュー】

写真左より 座長:和泉ちぬさん、演出:遠藤理史さん、ゲスト:市原康さん(パーカッションandアクター)

和泉ちぬさん主宰、演劇ユニット黒鯛プロデュース が、下北沢音楽祭25周年記念クロージング特別記念公演「勝手にワールドツアー」 を上演!「勝手にワールドツアー」開幕直前 稽古場レポート!【後編】は、座長 和泉ちぬさん、演出 遠藤理史さん、ゲスト市原康さん(パーカッションandアクター)に、「勝手にワールドツアー」のみどころをうかがいました!

・和泉ちぬさん・演出 遠藤理史さん による ステージ版「勝手にワールドツアー」のみどろこ

―今回のステージ版、勝手にワ〜ルドツア〜のみどころを、一言お願いします。

和泉ちぬさん

「それは、是非、演出に聞いていただいた方がいいですね。」

演出 :遠藤理史さん

「最初、座長が『朗読をやりたい』と言い出した時に、脚本の小鹿坂さんとただの朗読にならないようにするにはどうすればいいか、を話して。そもそも役者が台本を朗読するのは何故なのか。台本は置いて、セリフを覚えてしゃべってもいいわけで。朗読劇が朗読劇として成立するのは、地の文を読むからってところが大きいと思うんですけど、でも、演劇の台本には地の文はないですから。どういう話なら朗読でやる意義があるだろうと考えてたんです。さらに座長が「朗読だけじゃなくて、ピアノとヴァイオリンがいるのよ!」と言うんで(一同爆笑)その生演奏をただの「朗読のBGM」にしないためにはどうしたらいいのかって考えたんですよ。そのうちに、登場人物が自分でヴァイオリンを弾いていて、その人が色んなところで演奏した音源を送りつけてくるっていう設定が出てきたんです。で、送られてくるメールを朗読するんならどうかと。手紙の声だから朗読してる、ということなら分かるし、そうすると出演者二人が台本持って(読んで)る意味がある。しかも演奏される音楽が、「朗読のBGM」じゃなくて物語の一部であり、

その演奏がお話にも影響している・・・。というような事を考えたんですね。ですから、そこらのと言っては、失礼ですけど(一同笑)時々見かける朗読とBGMではない。音楽もストーリーの中にちゃんとある。その演奏があることでストーリーが進んで行くっていう朗読劇ができるんじゃないかなぁと期待しているんです。」

―脚本づくりとしては、和泉ちぬさんの希望が先ですか。それとも脚本がまずありきで、そこへ和泉ちぬさんのお気持ちという形ですか。

「それは、何はともあれ、ちぬさんの希望です。うちの座組は毎回そうです。」

―「メールでのやりとりにしよう!」というところが、脚本、演出で、「音楽を使いたい。」というところが、ちぬさんのご希望でいらっしゃるんですね。

「そうですね。

ちぬさんが、最初に、「次は、朗読よ!」と言うんですよ。で、僕らは「はぁ」って(笑)。

「そして、ヴァイオリンがいるからね!」、「はぁ、ヴァイオリンですか。」

「そして、そのヴァイオリンは、ジプシーヴァイオリンだから。」

「クラッシックヴァイオリンじゃないんですか?」、

「ジプシーヴァイオリンなのよ!」

そんなわけで、『ジプシーヴァイオリンが演奏する朗読』って言うのが、お題として最初にあるわけですよ。

落語の三大話みたいな感じなんですけど、

ちぬさんが毎回、「今回は××だ!」というような事を仰って、それを僕らが必死に舞台にする。

ちぬさんが三味線に凝ってた頃には「今回は、三味線!」「はぁ」

その次はフラメンコ習ってたんで、「フラメンコを踊るのよ!」って言って「はぁ」って言って、

その次は「私、弁護士役がやりたいわ。」って言って、「弁護士役ねー」なんて感じで。」

和泉ちぬさん

「まぁ、いつも色々と。」

遠藤理史さん

「今回も、「朗読とジプシーヴァイオリンよ!」までが先にあったお題で、後はみんなで考えて、場所も小っちゃいところでやろうってことで。昨年それをやったらおかげさまで好評いただいて。「またやろうか」って言ってたら、 ちょうど下北沢音楽祭さんからのお話があったんです。下北沢と言えば演劇の聖地じゃないですか。よく演劇観には行くんですけど、黒鯛はここでやったことなかったんですね。この前下見に行って、「いよいよ俺達も下北沢に来たか」って気分になりましたよね。」

和泉ちぬさん

「うん。」

―いよいよ演劇界の本丸の下北沢に乗り込んで・・・。

遠藤理史さん

「いやいや『乗り込む』とかおこがましい。小劇場界の隅っこに参加させていただこうとしている、かもしれない気がする、くらいのもんで。とても『乗り込む』みたいな感じではないですね。どっちかと言うと、すっげぇー盛り上がってる宴会場の隅っこで、 「端っこがちょっと空いてる!この辺にちょっと入れてくださーい!」って誰も気づかないうちにこっそり座らせてもらって「わー凄い!なんか『演劇宴会』に加わって一緒に飲んでるみたーい!」そういう感じです。」(一同笑)

和泉ちぬさん

「でも、下北沢音楽祭だからね。音楽祭よ。しかも、25周年記念。」

―大抜擢ですよね。

和泉ちぬさん

「大抜擢ですよ。」

・和泉ちぬさん主宰、「黒鯛プロデュース」制作の舞台裏現場についてのお話。

―すごい長いお話になってしまうと恐縮なのですが、遠藤さんが、黒鯛プロデュースで舞台演劇をやろうと思われたきっかけは、どんな形だったですか。

遠藤理史さん

「全然、長くないですよ。ちぬさんに、「やらないか?」って言われたからです。簡単ですよ。」

和泉ちぬさん

「そんなもんなのよ。」

遠藤理史さん

「黒鯛で演劇やってる人みんなそうなんですよ。ちぬさんが長いことお仕事されている中で、ある日「ちょっとあんたあたしの舞台やんない?」って、連れてくるんですよ。僕も連れて来られた1人。黒鯛のメンバーは、全員ちぬさんを中心につながっているメンバーなんです。ちぬさんが最初に誘って下さった時は、僕は舞台の演出とかやったことがなくて、でも「あんた面白そうだから演出やんなさいよ。」って。

和泉ちぬさん

「そんなに偉そうじゃないわよー」(笑)

遠藤理史さん

「今回出演のパーカッションの市原さんを連れて来た時もね、

「知り合いにねジャズドラマーがいてね芝居が面白いのよ。」ってちぬさんが言って

「え?仰ってる意味がわかりません。どういうことなんですか?」(一同爆笑)

だってそうですよね。ジャズドラマーなんですから。芝居したところ見たことあるのかって。

「ないわよ。でも、芝居が面白いのよ。」

「そんな馬鹿なー」なんて言ってたんですけど、本読みに来てもらったら本当におもしろかったんですよ。(一同笑)

いやもうね、驚きました。

その後も、「面白い牧師がいる」とか「知り合いの引きこもりの子を出す」とか次々に。

「えー引きこもりでしょ?稽古来られるの?」って思ったんですけど、それがなぜか稽古にはちゃんと来て。最初はセリフもまともに言えなくてどうなるかと思ったんですけど、本番が近付くにつれてなんだか急激に上手くなって、本番では彼の台詞を聞いて周りの役者がみんな泣いちゃって。」

和泉ちぬさん

「本当よ、そうなっちゃう。不思議よー」

遠藤理史さん

「ちぬさんが、何故、そういう人を見つけてこられるのか、まったく今でもわからない。」

和泉ちぬさん

「私もまったくわからない。」(笑)

遠藤理史さん

「黒鯛でずっと脚本書いている小鹿坂さんも、ちぬさんが引っ張って来たんですね。

「面白い脚本書く人がいるのよ」って。

で実際書いてもらったら本当に面白くて

「すごいなちぬさん、どこでこの人の本読んだの?」って聞いたら

「いや今まで読んだことない」って。

「じゃどうして書いてもらおうと思ったの?」って思いますよねえ(笑)。

―ちぬさんは、それは、第六感的な感じですか。

和泉ちぬさん

「喋ってるうちに、なんかね。」

遠藤理史さん

「小鹿坂さんが入ってからは、小鹿坂さんと僕が最初にちぬさんからお題をいただいて、二人で別室にこもって、「うーん」て考えるって感じになりました。なかなか思いつかなくて「もう今日のところは帰るか」って解散したら、小鹿坂さんが家に着いたあたりで電話かかってきて「思いつきました!」ってなったりね。」

―今回のこの作品の場合は、どうでしたか?

遠藤理史さん

「ちぬさんからお題をいただいた後、ジプシーヴァイオリンの高橋さんのライブをみんなで観に行って、

その世界観を聞いてるうちに、世界各国からメールが届くって感じでどうかとか、添付ファイルを開けたら演奏が聞こえるとかいう話になったように思います。」

―ちぬさんの役のキャラクターは、どの辺りで決まっていくのですか。

遠藤理史さん

「お題からだいたいの企画が見えてきたら、一度ちぬさんを相手に企画のプレゼンをするんですよ。コンセプトとかおおまかなあらすじを説明して、「それで良し」と言っていただけたら、脚本作りにとりかかります。プレゼンを聞いてちぬさんから何か希望があれば、それを入れて考え直します。そこまでにだいたいキャラクターは決まりますね。後は小鹿坂さんが脚本を書いて、二人でそれを何度か直して、だいたい決定稿に近いものができたらちぬさんに読んでもらい、希望があればまたそれを入れて直す、っていう感じで進みますね。」

―すごいリッチな演劇ですね。

和泉ちぬさん

「そうなの。普通はないの。この人たちは、あんまり他の演劇は知らないから、よそへ行ったらいっちゃん(市原康さん)なんかびっくりするかもしれない。いっちゃんは黒鯛しか知らないから。」

市原康さん

「温室育ちだから。」(一同笑)

プロドラマー市原康さんの公式サイトはこちら

http://www.exb.itsudemo.net/~dr-ichihara/

ジャズドラマー・市原康さん率いるTRIO'(トリオッ) が結成10周年目にお届けするアルバム「Amazing Grace」のプロモーションビデオは、こちら

遠藤理史さん

「演劇には大きく言うと、二パターンの座組みがあると思ってるんですけど、一つは作・演出家が極めて強く、あらゆるものを握っていて、その人の世界観を表現するタイプ。もう一つは、強いプロデューサーがいて、その人のアイデアをみんなで実現するタイプ。プロデューサーが強いのは主に商業演劇畑で、小劇場界では、強いプロデューサーがいてその人は本を書かないみたいなやり方をする座組みはあまり多くないと思いますけど、黒鯛の場合は、なんとなくちょっと商業っぽい座組みで、すごい小劇場っぽい事をやっているみたいなイメージですね。最初のアイデアを出す人が決まっていて、みんなでこう走り回って何とかするって感じです。

それと、小劇場系の劇団って、本番直前に脚本が上がるとかザラで、そうすると脚本を直す暇なんかないじゃないですか。もし時間があったとしても、作演出家が一人で力を持ってる座組みではその人に本を直させる人がいないですよね。

黒鯛の場合は、脚本はとにかく何回も直します。僕と小鹿坂さんが何度も直して脚本を完成していくんですけど、そういうやり方は他ではあんまり聞かないですね。だから稽古の初日までには必ず決定稿を皆に渡します。そこが特長かもしれません。」

和泉ちぬさん

「みんな本当忙しいのに、ありがたいです。」

2回に渡って、お届け致しました 和泉ちぬさん主宰、黒鯛プロデュース「勝手にワールドツアー」開幕直前 稽古場レポート!いかがでしたでしょうか。今回のインタビュー自体が、「黒鯛プロデュース」寄席で、一席聞いていただいたのではないかと思うような和泉ちぬさんを中心とする「黒鯛プロデュース」舞台裏制作エピソードを披露していただきました。また、和泉ちぬさんが見抜いた才能、ゲスト出演のドラマー市原康さんのお芝居も大きな見どころのひとつ。そして、女優 和泉ちぬさんが、いかに日々、新しい芸事を常にご自分にインプットし続けているのかというプロの凄み。ご自分の道で一流を極めた人だからこそ培われる「人を見る目」の素晴らしさを垣間見せていただいた黒鯛プロデュース舞台稽古場訪問でした。

皆様、是非この週末は、下北沢音楽祭25周年記念クロージング特別記念公演「勝手にワールドツアー」にお出かけ下さい!

そして、PRE☆STAGEでは、この演劇ユニット黒鯛プロデュース第13回公演リーディングライブ「勝手にワールドツアー」に、読者の皆様10名をご招待致します! 観劇ご希望の方は、twitter、facebookメッセージにてご応募下さい。みなさまからのご応募をお待ちしております!

【応募条件】
本文中「勝手にワールドツアーチケット希望」
・お名前
・年代
・希望人数
・希望公演回(1回目:14:00~ 2回目:18:00~)
・当選の方のみ twitter、facebookメッセージにてご案内致します。

公演の詳細については、黒鯛プロデュース公式サイトへ

演劇ユニット黒鯛プロデュース
http://kurodai.net/

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下北沢音楽祭 25周年記念 クロージング特別公演
黒鯛プロデュース第13回公演
リーディングライブ「勝手にワールドツアー」

日程:2015年7月12日(日)
①14時〜(13:30開場)
②18時〜(17:30開場)
上演時間90分(休憩無し)

会場:
北沢タウンホール

出演:
和泉ちぬ/木口健太

演奏:
ヴァイオリン:高橋誠/ピアノ:遠藤律子
パーカッション:市原康

スタッフ:
脚本:小鹿坂はらひと
演出:遠藤理史
音響:荒木まや
HPデザイン:前田秀彦
宣伝美術:宇田川薫
制作:楠章二

協力:
小川圭一、オスカープロモーション、Bites、IF STUDIO JAPAN、シーバップテクノ、
アイプロデュース、Takahiko Ono、金の星スタジオ、社会福祉協議会、
みんなの歌声サロン

主催:
下北沢音楽祭実行委員会

住所:
〒155-8666 東京都世田谷区北沢2-8-18-2F
TEL:03-5478-8006/FAX:03-5478-8006

小田急線・新宿から急行7分各停10分
井の頭線・渋谷から急行3分各停5分
下北沢駅南口から徒歩4分

料金:
¥3,000(自由席)
※高校生以下の学生料金設定<¥500>あり。
(当日会場清算のみ、身分証提示必要です。)
※未就学児入場不可

 

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