映画『溺れるナイフ』山​戸結希監督×佐久間宣行氏トークショー『一​流クリエイターになるには〝恋愛〟が必須な​のか!?』イベントレポート!!

10日、HMV&BOOKS TOKYO 6Fイベントスペースにて、好奇心旺盛なカルチャー女子へ向けて、6月に発売した新感覚ファッション・カルチャーマガジン『Maybe!(メイビー)vol.1』の書店イベント第二弾が開催!

Maybe! vol.1の特集テーマ「恋愛ってなんだ?」に関連して、11月5日公開の小松菜奈・菅田将暉出演の映画『溺れるナイフ』でさらなる飛躍が約束されている映画監督山戸結希氏と、『ゴットタン』をはじめとした多くのヒット番組を持つテレビ東京プロデューサーの佐久間宣行氏が、恋愛と作品づくりの関連性についてトークを繰り広げた。

『Maybe!』はクリエイター志望の読者が多い雑誌。山戸氏、佐久間氏のような一流クリエイターはどんな恋愛をしてきた&していて今があるのか?それはおふたりが生み出す作品の高いクオリティと密接に関係があるのか?つまり一流クリエイターになるには恋愛する必要があるのか?そして、ふたりのような一流クリエイターとつきあえるのはどんな人なのか?ということについて、赤裸々にトーク!会場は超満員で、用意したMaybe!は完売の大盛況!気になる二人の対談の様子をお届けします。

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◆映画『溺れるナイフ』山戸結希監督×佐久間宣行氏(テレビ東京プロデューサー)トークショー

Maybe!(以下M):本日はお二人に、Maybe!について、そして恋愛についてたっぷりお話しいただこうと思っております。まず今回創刊いたしましたMaybe!についてお聞かせください。

【〝捨てられない雑誌〟Maybe!について】

佐久間(以下佐):すごいよかったです。〝持ってる〟雑誌だなと思うのが、(巻頭で小説を書き下ろしている)村田沙耶香さんが(このタイミングで)芥川賞とりましたよね。

山戸(以下 山):本当ですね!

佐:本当に素晴らしい。しかもこのど頭の小説もすごい面白いんですよね。

山:(村田沙耶香さんの)最新作ですからね。

佐:芥川賞受賞作家の最新作がメイビーに載ってるんだもんね。

山:すごいですよね(笑)。 狙ってできることじゃない。

佐:村田さんの作品って、読んでいると、その文章をずっと読み続けたくなる。止まらない。特に男の僕からするとこの短編は、読んでいてすごくひりひりする感じがあります。

山;(会場に溢れ、二重三重に立ち見の、すごい数のお客様を見て)本当にメイビーの注目度はすごいですね。やっぱり雑誌の名前変わったから!?(笑)

M:こんなに満杯です(笑)

山:最初、私と佐久間さんにこの企画が来たとき、二人とも「なんで自分なんだろう」って(笑)

佐:そうなんですよね。これだけは先に言っておきますけど、僕と山戸さんで恋愛トークするっていうのは、企画した人すごいなっていう(笑)。

M:すみません(笑)

山:Maybe!がどれだけ気が狂った雑誌かっていうのを表していますね(笑)。

M:すみません(笑)

佐:笑っちゃったのが、濱谷さんからメールもらった時に、恋愛がテーマなんですって、クリエーターの恋愛っていうのがテーマんですって書いてあって。そのあと送られてきたのが、佐久間さんとか山戸さんみたいなクリエーター恋愛する方法でもいいですって送られてきて(笑) いや、それはもうどういうトークなんだっていう(笑)

山:Maybe!もThis!(※Maybe!の前身のムック)もそうですけど、この雑誌はクリエーターほいほいというか、ものすごい大物食いなんですよね。いつも魅力的なラインナップなんです。今回そのメイビーのやり方の一端を見たのは、最初は、「佐久間さんとトークしませんか?」ってお誘いをいただき、それは是非となり、で、また間をおいて、「今回、雑誌のテーマが恋愛なので佐久間さんと恋愛についてトークしませんか」となって、そしてギリギリになって「佐久間さんと山戸さんのような一流クリエータと恋愛するにはどうすればいいのか」ってテーマが送られてきていました(笑)

佐:テーマのずらし方がすごい(笑)

山:三段階できて、しかもその最後の企画書がめちゃくちゃ長くってすごい熱量なんですよ。それが来た時に…いや、なんかちょっととはもう言えない、もうよろしくお願いしますってなる (笑)

佐:経済ヤクザのやり方ですよね(笑)

山;はい。ほんとに編集ヤクザの皆さんが作ってる雑誌ですね(笑)

M:ありがとうございます(笑)

佐:でも僕、この雑誌、感想書いたんですけど、呪いみたいな雑誌だなって思って。

山:確かに。

佐:ほんとに呪いみたいにいろんな思いが詰まってて、簡単に読み飛ばせるページがないっていう恐ろしさ(笑)。 バーッて読んでて、あ、漫画だ、ちょっとホッとできるかなって思ったら、漫画もホント呪いみたいな漫画が入ってるから(笑)。鳥飼さんの作品とか(笑)

山:ずっと、捨てられないですよね。

佐:そうそう、それ思います。

山:これからも後で読み返そうって思わせてくれる、反復性がある雑誌。

佐:そうだと思いますよ。This!の時も思いました。憧れの100人の企画の中でテレビの職業のこと書いたの、僕と藤井健太郎なんで。テレビ界で一番性格の悪い二人をもってくるあたり。藤井健太郎って『水曜日のダウンタウン』やってる人で。おもしろいんだけど日本一性格の悪い番組作ってる、そんな天才なんですけど藤井君は。

山:映画界から、このThis…、痛っ!(マイクを歯にぶつける)

M;大丈夫ですか?(笑)

佐:山戸さんいっつもこうですから(笑)

山:This!がVol.1で掲載している映画監督も、濱口竜介監督と私なので、すごく濃いチョイスで。私、This!ってめっちゃいいタイトルだなあと思っていたんですが。大人の事情でMaybe!にタイトルが変更になっちゃったって、うっかりしてて可愛いですよね (笑)。でもこの雑誌、ほんとに続いて行って、(作っている人たちが)それこそ昔で言う『宝島』に関わった編集者みたいな、伝説の編集者のような存在になる気がします。

佐:だってこれ作ってらっしゃる、濱谷さんと、金城さんと小林編集長とは、もともと一緒に一つの雑誌をつくってた訳ではないんですよね。

山:それぞれ違う部署の方が有志で作ってらっしゃるんですよね。

M:そうです。有志で作ってるんです。

山:だから、依頼の時も、「もうなんかそんな風に言われたら、Maybe!に載るものが自分の最高傑作になるように書かなければ」って思わせるようなお手紙みたいなメールをくださるんです。きっとものすごい雑誌になっていくんだろうなって、リアルタイムで心から思わせてくれる。載っているのも、「社会にどう許容されるか」みたいな記事ではなくて、すべてのページが、個的な渇望がスタートになっている。編集者の方が、「私自身が読者だったら私がいちばん読みたい」っていう気持ちで作っていて、ZINEカルチャーの延長線上にあるとも言えるというか。その個人的な、私的な挑戦を、小学館から、本当に一流クリエーターを集めて熱を起こしている革命的な雑誌だと思いますね。次号もその次も、ずっと楽しみです。

濱:「君がポカリを飲む頃は」についてのお話をお願いします。

佐:山戸監督はほんとにこういう、片想いみたいな…さっきも呪いみたいなって言いましたけど、そういう思いを書かれたら素晴らしいですよね。僕も何回も読んでて…これはタイアップですか?

M:タイアップです。

佐:タイアップなのに、こんなに作品性があって読みたくなる。こんなタイアップ見たことないですからね。素晴らしいなと思いますよ。

山:ありがとうございます。後で堀越千史ちゃんが、朗読してくれますね。小野啓さんの写真も素晴らしかったです。こんなすごい方がいるのだなと。乃木坂46『ハルジオンが咲くころ』のジャケットを撮られている方なんですけれど。小野さんは凄まじい写真の力を持っている方でした。それと……後で朗読するとき、ロミオの台詞を、佐久間さんに読んでもらって大丈夫ですか?(笑)

佐:いやいやいや、山戸さん、編集ヤクザのやり方と同じですよ!(笑)

山:そうそう、『君がポカリを飲む頃は』の前にある、サカナクションの山口一郎さんのインタビューもすごく面白いんです。Maybe!の編集者さんが面白くて…山口さんはクラブは恋愛うんぬんじゃなくて芸術を味わう場所だってことをおっしゃっているのに、もう全くめげずに何度でも食い下がって…どんな返しに対しても、「でもやっぱり恋愛に関係ありますよね?」って(笑)

佐:そう、この記事はすごい面白かったですよ。あの山口一郎さんに「彼女にしてほしい服装は?」とか聞いてて(笑)。「彼氏の前で踊るのは抵抗があるって女性もいるんですが」とか。強引にテーマに持っていく(笑)。このインタビューは豪腕ですよ。ぜひ読んでください。

【傑作『溺れるナイフ』について、山戸監督の人となりについて】
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佐:僕は山戸監督の『溺れるナイフ』を見たばっかりなので、それがすごいって話を今日はしたくて。みなさん、まだでしょ?見たほうがいいですよ絶対。映画評論家の宇野さんって方もツイートしてたんですけど、つまんないカットが一個もないんですよ。ほんとに素晴らしくって。菅田さんも小松さんもすごいけど、僕はジャニーズウエストの重岡君とたまに仕事をしてたんですけど、重岡君があんなにすごいと思わなかった。っていうか、女の子だったらずきゅんってきちゃうようなキスシーンとかが、すごくいいっていうのがあってですね。僕、試写見終わったあと、山戸さんに感想送ろうとしたんですけど、いろいろ、メールでは伝えられないなと思って。豪雨だったんですけど、「見終わったら雨が上がってました」っていうわけのわからないポエムみたいなの送ってて。

会場(爆笑)

佐:そう送っちゃったくらい、いろんなことを考える映画で、素晴らしいんですよ、ほんとに。

山:忘れがたい思い出ですね、「あ、佐久間さんからメール来てる」と思ったら、「見終わったら豪雨が快晴でした」って内容で (笑) 映画に触れてくれないのかな?って思いました(笑)今まで、乃木坂46さんなど女子のアイドルを撮らせていただいてきたのですが、ペルソナとその個人の身体性をめぐる問いがずっとあって、もし、男子のアイドルを撮るとしたら、こういう方法論に変換して適応できるのになって思っていました。その実験の記念すべき第一弾として、純朴な重岡君にぶち込んでしまいましたね。

佐:重岡君がそういうタイプの人に見えない、ペルソナがあるタイプじゃなくてそのまんまに近いじゃないですか、それをよく更にやったなっていう。山戸さんすごいことやってるなあって思いましたね。

山:重岡君には、すくすく育っていってほしいなって思います。

会場(笑)

山:初映画ではないけれど、初映画みたいな形で呪いをかけたので。

佐:いや、皆さんも観た後わかります。山戸監督がかけた呪いだなっていうのが、観たらわかるシーンでしたね。

山;すくすく育って行く呪いです。

佐:僕この間『おとぎ話みたい』のイベントに行ったんですよ。僕が行ったのは一部だったんですけど、二部では大林監督と対談をされていて。見てない方もいらっしゃると思うんで言いますけど、僕後で聞いたんですけど、山戸監督いきなり出てきて芝居打ちだしたってほんですか。

山:はい、第一部がグダグダで落ち込んでしまい、でもせっかく来てくださってるお客さんの前で、自分が一番テンションあげなきゃと考えました。それまでお芝居を一切したことなかったんですけど、「時をかける少年に捧げる、初芝居を打ちます」って言って、きっと客席のあそこ、暗闇の中で大林監督が見てくださってるんだ!と気持ちを込めながら、初芝居をお見舞いしたんですけど。

佐:急にでしょ!

山:そうなんです(笑)

佐:すごくないですか?(笑) 大林宣彦の前で急に初芝居を打つって(笑)

山:急にやったんですよ。だから、その間大林監督裏手に移動してて見てなかったんですよ(笑)。特に触れられずに、普通にトークショー始まりましたね(笑)

【一流クリエイターと恋愛するには?】

M:いまお二人の、ご自身の創作に影響している恋愛について教えてください。

佐:僕はほんと田舎の男子校の人間で、高校三年間、気が付くと妹と売店のおばちゃんとしかしゃべってないような時期が三年くらい続く男子校だったんで。そこから東京出てきて、一年くらいかな? 緊張して女性としゃべれないっていう状態で。大学受験のとき立教の英文を腕試しに受けようと思ったんですが、その受験会場の大教室に入った瞬間に、二人くらいしか男がいなくって、それに緊張して落ちたんですから(笑) 女の匂いで(笑) それで、緊張して落ちたってくらい女性が苦手でした。

山:それは、佐久間さんが作られる番組のホモソーシャル感に受け継がれている感じがしますね。

佐:そうですね。いま『ゴッドタ』ンって番組をずっとやってるんですけど、ディレクターはみんな結婚してるんだけど、だいたいいつもゴシップ記事とか読んで、かわいい女とやってるイケメンの悪口を30分くらい言ってから、会議を始めるんです。そうするとすごいやる気が出て(笑) 畜生、○○、もててんなぁーって言いながらやってる。その共学に対する怒りみたいなものが高校時代に育まれていて。男子校的なルサンチマンが、お笑い好きとかそういうところに、僕を向けたのかなって思いますけどね。恋愛の話ってこんなことでいいんですか?(笑)

山:接続しますよね。でも、佐久間さんと同じく、10代のときの恋愛は、自身の作品と関係がある気がしますね。私も10代の青春を反復して撮っているので。こういうポップな雰囲気の中で、急に体験談を話すのもどうかと思うんですけど、やっぱりこう10代の時に……ちょっと恥ずかしくなってきた(笑)

佐:ちょっと待ってくださいよ(笑)

山:急にのどカラカラになってきた(笑)「学生時代に何考えてました?どんな本読んでました?どんな映画見て、どんな音楽聞いてましたか?」と聞かれるんですけど、正直、別にカルチャーはそんなに、(自分の作品と)関係がなくて。あの時ずっと恋愛してたことの方が、深く起因していると思いますね。やっぱり恋をした時の女の人の心と体に、男の人に対してどんな反応が起こるのか、男の人が女の人に何を求めるのかっていうのが、10代の時にああこうなんだなあ、ということが全てわかったので、逆にこれからは、誰と出会っても余暇だなという感じでしたね。

佐:誰と出会っても余暇だなって思うくらい、10代は恋愛してたの?

山:言葉にすると「どうした!?」って感じですけど、女性の真実はそうなんじゃないでしょうか。愛と夢という選択肢が立つ前に、デフォルトとして、恋愛に対して被支配的な状況に置かれているというのか。恋は、何も与えられなかった地方の女子中高生にとっての、唯一のエンターテイメントですから。今はネットが普及してるかもしれないけど、でもネットだって結局ポルノとか社会的なモテとかにたどり着いちゃうから。ただ与えられた自分の体だけでどこまでいけるか、自分のすごく限定的な身体でどこまでいけるかっていうゲームしか地方の女子にはエンタメとしてなくって、恋愛するしかないという感じだったので。やっぱりそこに対して、マジで恋愛よりも面白いものがあるって射光させたいですけどね。それは最初から芸術の形だと届かないから、きっと、恋に一番良く似た芸術みたいなものになると思うんです。映画『溺れるナイフ』が、本当にそういうふうに届いて欲しいですね。

佐:監督が映画撮りたいって思ったのはいつ頃なんですか?

山:それもすごく遅くって、大学2年生の終わりに映画研究会を立ち上げようかということになって。大学3年生の春にみんなを集めて処女作を撮りました。大学3年生って就職活動をする時期なので、変な傾きで映画に寄って行ってしまって、不思議な時期でしたね。

佐:最初に撮ったのが、『あの娘が海辺で踊ってる』。すごすぎますよね。

監督は作風に、実体験はでるんですか?溺れるナイフは原作があるけど、今まで撮ったものとか。

山:フィクションの中でしか真実は物語れないのだと思いますね。現実の言葉で、今個々で、「今三年間付き合ってる彼氏がいて」って言ったときに、言葉にしちゃうと何かが決定的にすれ違ってしまう。世界でたった一人の人間を見つめながら、この宇宙でたった一回の恋だと思って生きた時間は、フィクションの中でだけきらめくことができるというのでしょうか。

佐:『おとぎ話みたい』みたいな映画って、どうやって着想するんですか?

山:今回Maybe!で恋愛っていうテーマをいただいて考えたことなのですが、今まで自分が恋愛映画だけを撮っているっていう自覚が全くなかったですね。ただ事実として、恋愛映画だけを撮って来ているんですけど、「ラブを撮ろう」と思って撮ってるわけじゃなくて。若い10代の肉体の実存にかかわる問題として、何が決定的に響いてくるのかを考えたときに、女の子の10代の人生を揺るがすものが恋でしかないっていうのがあったんでしょうね。結果、若い女の子を撮ろうとしたときに決定的にいつも恋が絡んできていたっていう感じですね。『おとぎ話みたい』もそうだったのかな。

あらすじにしちゃうと「若い女の子が先生に恋をする話」っていうめちゃくちゃ定型的で、あちこちにあるような愚かな恋愛とか憧れでしかないんですけど、ただその中にある内的な一回性の真実として、10代の恋愛を撮りたいっていうのがあったんです。

M;じゃあ、佐久間さんと山戸さんと付き合うのはどうしたらいいですか?

山:「一流クリエーターと恋愛するには」というクエスチョンには、二つ解があると思いますね。一つ目は、「自分が超一流クリエーターになること」。そうすれば、一流クリエーターと付き合うのは簡単です。みなさん、静寂ですね(笑) 二つ目は、「その人を超一流クリエーターにしてあげようと動くこと」ではないでしょうか。代替の効かない恋愛を望むには、その二つしか、道がない気がしますね。

佐:いや、僕も全く同じです。そう思いますね。僕は大体、映画が好きな人とか趣味が合う人とは長く続かなかったんですよ。それはなんでかっていうと、同じ映画とか漫画が好きな人って、最終的に価値観の決裂が訪れるんですよね。唯一結婚できたのは、好きなものはちゃんとあるんだけど、別々で映画観に行くとか、意見は言わないとか、そういうことの出来る相手で、だから結婚できたんですけど。

山:すごい勉強になりますね。結婚、面白そうですね。

佐:ぼくは12年結婚してるから一概に言えないけど、身を削るときもよかったなって思う時もある。人と一緒に暮らすっていうのは、おもしろいです。

山:恋愛って言語化できないんですけど、だから一生語らなくてもいいものだと思うんですが、結婚って言葉として社会化されるじゃないですか。普通の夫婦はこうというように規定もされるし、その問いもきっとスリリングですよね。

佐:ホントに普通の夫婦ってないじゃないですか。それぞれそれなりに地獄を抱えてるっていうか…夫婦とか家族っていうのは全部が幸せじゃないですからね。それぞれの零れ落ちちゃう地獄みたいなものを持っていると思います。

【会場の質問:恋愛相談】

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M:会場の皆さんからたくさん質問をいただいています。恋愛相談もきています。

佐:僕、じゃあ読みますね。「現在29歳です。高校生の頃から一人の人とお付き合いしています。恋愛は作品にも影響すると思いますが経験豊富な方と私のように一人の人としかお付き合いしたことない人とでは作品からそんな違いを感じますか?ないものねだりかもしれませんが、たくさんの方といろんな恋愛をされてきた方と作品が魅力的にみえてきてしまったりします」

山:この方は、今の彼氏と真剣に付き合いつつ、いろんな恋をした方がいいと思います。はい、じゃあ次!

会場(爆笑)

山:必ず、そうしてください。

佐:「恋愛相談です。今一回りくらい上の人に片想いしています。何度か二人で出かけて、向こうも好きでなかろうかと思うのですが、付き合うとかはできないといわれています。酔っぱらって手をつないだときとか、いくつだっけ?と聞かれて、やっぱり年齢差がネックなのかと思っています。年の差恋愛は両方にとって確かにリスキーだと思いますがどうしたらその壁を乗り超えようと言えるのでしょうか。ちなみに二十代前半と三十代後半です」

山:これ、佐久間さんにお聞きしたいですね。

佐:でもこの三十代後半の方のほうが、ものすごくいいやつじゃないですか?きちんと二十代前半の子との恋愛を考えてて、飛び越えられないって言ってるって。

山:そうなのかな? でも私からこの方に言えることは、相手が本当にスイッチ入るまでは良い具合に温めておいて、他の沢山の人と恋愛をした方が良さそうですね。

会場(爆笑)

山:だって、ほんとにそうだから(笑) 絶対にそれが真実だから。

佐:次の質問。「齢22年、彼氏ができたことがありません。告白されてもタイプじゃないので断り、告白してもタイプじゃないからと断られ、恋愛を成就させる秘訣はなんでしょうか? お二人は自分と相手の需要すんなりマッチすることが多いですか?」でも告白をされてるわけだからね。とりあえず付き合うってことができないってことですよね。

山:自分と相手の需要がすんなりマッチすること、か…。

佐:こんなことってめったになくないですか? 需要がマッチすることなんて。

山:やっぱり、どっちかの欲望が駆動してから、反射するのですかね。

佐:どうですか? 山戸さん、一刀両断してください。

山:この方おそらく、魅力的な方だと思うので、でも成就されないのは、まず告白の仕方に問題があるのではないでしょうか。「こんなこと言われたら絶対に断れないよ」「好きになっちゃうよ」という告白をしたらどうですか。クリエイションに恋愛が必要なのではなく、恋愛自体がクリエイションなので。もしも異性からこんな愛の告白をされたら、こんな出会い方をしちゃったら、好きになるしかないっていう岐路はあるじゃなですか。それはこの世に現然と存在しているわけですよね。ご自分が、全然好きじゃない人からどう告白されたら、「あ、でもこの人と付き合ったら夢の世界が広がってるかもしれない…」と思えるのか。そんな、面白い告白空間を創造する方向でぜひ。相手がYESって言うしかない、その道を照らし出すような告白をしてみたらどうでしょうか。

【会場質問:お二人の恋愛観について聞きたいこと】

佐:質問「恋愛すると何か自分に変化は起きますか? 今までそのような経験はありますか?」

山:どうですか? 女の子に囲まれて立教に落ちた佐久間さんですが、なにか変化はありましたか?

佐:僕の作るものでいうと、変わらないですね。彼女ができると、おもしろくなくなる芸人とかいるんですよ。彼女にそんな下ネタいうのやめてって言われて。別れたほうが面白くなる芸人とか絶対いて。実は僕もそうなんですよ。結婚して、他の女性がなんとも思わなくなって、モテようと思わなくなってから、面白い番組を作るようになりました。色気がなくなったというか。奥さんは僕の番組を見ないので、誰かに好かれようと思って作らなくていいから、BPOに怒られないレベルまで攻めて大丈夫だなとか。もし彼女が僕の作るような番組が苦手な人だったら、ちょっと気にしたと思うので。

山:その感じすごくわかりますね。いま映画を見てくれてる方は、女性のお客さんが多くて、『溺れるナイフ』も女性向けの作品なんですけど。最初のインディーズの映画の世界には男性の監督が多い中、男性にはどう見られるのかという意識を捨てないと強い作品を作れないなと思いました。

佐:山戸さん。「初恋はいつですか」っていうのが来てますよ。

山:次の恋を、初恋にする予定です。

佐:おぉ~。山戸さんとラジオやりたいですね(笑)

山:じゃあ、テレビ東京でラジオやりますか。テレビ画面を真っ暗にして(笑)

佐:その企画書書いたら、僕気が触れたと思われますよ(笑) 「山戸さん、佐久間さんこんばんわ。早速質問です。忘れられない恋愛はしたことありますか?出会った瞬間に、あ、この日と一緒になるなとか第六感が働くような運命の恋ってしたことありますか?」 ペンネーム、えみさんから。

山:佐久間さん、どうですか?

佐:結局運命の恋じゃなかったんですけど。19か20くらいの時に付き合ってた子がいて、その子は第一回目のフジロックでハイロウズの時に将棋倒しになって救護室に運んだ子だったんですよ。台風が来てみんな死にそうになってた伝説の回。

山:佐久間さんのようにトラブルシューティング能力の高い男性は往々にして、女性に、「こんな窮地から私を救ってくれるなんて、これが運命の恋なんだ」って思わせますね。

佐:彼女を救護室に運んだら、お名前だけでも…って言われて(笑)

山:完全にロミオですね(笑)

佐:「今の仕事をしていて、大学時代にやっておいたほうがいいってことはありますか? 恋愛も必要ですか?」 クリエーターを目指してるんでしょうね。

山:きっとね、大学生だったら、恋愛より夢を目指して具体的に努力したほうが早い気がしますよ。

佐:そうですよね。恋愛が必要だから恋愛をするのではなく。大学時代に夢をかなえるために好ぬほど努力したほうがいいと思います。そっちのほうが早いですよ絶対。

山:テレビプロデューサーになっている自分に、映画監督になっている自分に恋をするみたいな感じで。そういう気持ちで頑張っていけば、その途中で自然と、いま「恋愛が必要だから」って思ってする恋愛よりも、良い恋愛ができるんじゃないですかね。一挙両得で、進まれてください。

佐:「夢をかなえるために必要なものは何だと思いますか?」難しいですよね。

山:佐久間さん、夢は叶っていますか?

佐:うーん。夢が叶ってるかって言われたら難しいですね。その都度目標はできているけど、作れば作るほど、今ある自分は自分が憧れていた番組への道に続いてるような気もするけど、遠ざかってる気もするというか…足りないものがどんどん見えてくると思うと、夢がかなってると思ったことはないですね。

山:でもずーっと夢を見続けて、どんどん大きいほうに行くって感じですものね。どんどん遠くに行くというか。

佐:そう、具体化するほど。近づいて遠ざかっての繰り返し。

山:恋愛って、「恋に落ちる」とか、「心を奪われる」っていうじゃないですか、でもきっと、その状態では夢は叶わなくて。自分の心の輪郭を知ると、きっと夢は叶います。芸術は心の発露だから。夢を叶える恋っていうのは、心奪われる恋ではない。

そうではなくて、自分の心が自分の心のままで、好きな人が自分の心に触った時、「あ、そんなところに私の心の形あったんだね」って、心の形の輪郭を教えてくれるような恋。そういう恋があるんだと思いますね。そういう恋は必ず芸術に姿を変えてゆくと思うので、心を奪われずに、自分の心のままで相手を見つめるということで、頑張ってほしいですね。

出演者プロフィール

●山戸結希(映画監督)Maybe!前身の『This!』「あこがれの仕事につく100人の図鑑」企画に登場。『Maybe!』では「君がポカリを飲む頃は」と題したポカリスエットの企画を書き下ろし。2014年に『5つ数えれば君の夢』が渋谷シネマライズの監督最年少記録で公開され、『おとぎ話みたい』がテアトル新宿のレイトショー実写動員を13年ぶりに更新。2015年、日本映画プロフェッショナル大賞新人賞を受賞。11月5日に小松菜奈・菅田将暉主演の最新作『溺れるナイフ』公開予定。

 

●佐久間宣行(テレビ東京プロデューサー)Maybe!前身の『This!』「あこがれの仕事につく100人の図鑑」企画に登場。大ヒット番組『ゴッドタン』のほか、既に4作を重ねている『ウレロ☆未確認少女』シリーズ、コントドラマ『SICKS〜みんながみんな、何かの病気〜』、BSジャパン『文筆系トークバラエティ ご本、出しときますね』など数々の話題作を手がける。

●「Maybe!」概要
発売日;2016年6月16日(木)
定価;本体800円+税
判型;A4変形判116ページ

<公式サイトURL>
http://www.shogakukan.co.jp/pr/maybe/
※新芥川賞作家の村田沙耶香さん、人気モデル、女優の玉城ティナさん他、各界からMaybe!を絶賛するコメントも随時掲載中!
http://www.shogakukan.co.jp/pr/maybe/comment.html
<電子版も好評発売中>
http://www.shogakukan.co.jp/purchase/digital/books/09103781

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