イーサン・ホーク監督作に人気ピアニスト金子三勇士が感銘!舞台恐怖症から学んだ人生の在り方とは?

89 歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインの生き様を描いたイーサン・ホーク監督作『シーモアさんと、大人のための人生入門』のスペシャルイベントが、1 日、スタインウェイ・ジャパンのセレクションルームで行なわれ、ピアニストの金子三勇士氏と評論家の小沼純一氏が登壇。本作に深い感銘を受けたという二人の熱いトークセッションに加え、普段は一般公開されない同セレクションルームの貴重な見学会、さらには金子氏によるピアノ生演奏が行なわれ、この日招待された観客を魅了した。

本作は、アーティストとして、一人の人間として、行き詰まりを感じていたイーサンが、シーモアの人間性とピアノに触れ、たちまち“安心感”に包まれたことから、彼のドキュメンタリーを自らの手で撮ることを決意した意欲作。50歳でコンサート・ピアニストの活動に終止符を打ち、その後の人生を“教える”ことに捧げてきたシーモアの半生を、美しいピアノの調べと宝石のような言
葉たちをちりばめながら綴っていく。

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邦題に本作の主旨が込められているという小沼氏は、「単にピアニストの話を描いたものではなく、いろんな方が観て、いろんなことを考えられる映画。子供にではなく、様々な経験を積んできた“大人”に、シーモアさんは人生の方向性を示唆してくれる」と称賛。一方の金子氏も、「全く同じ印象を持ちましたね。愛と優しさを込めたメッセージを、音楽や言葉を通じていろんな方
にお伝えしようという気持ちが直球で伝わってくる。僕も一人の駆出しの社会人として、涙が出るくらい心に響きました」と大いに共感していた。

また劇中、イーサンが、舞台恐怖症で悩んでいたと告白するが、現役のピアニストである金子氏は、この症状に対して「ずっと恐怖、ずっと安定、というのではなく、ある種の“波”ですね。物理的にも体調的にもコンディションが悪い時とコンサートがぶつかってしまうと、思い描いていた結果が得られない場合がありますが、そういう瞬間に自分を見失い“恐怖”を感じます」と吐露。「ただシーモアさんも、何度も舞台恐怖症を経験されていると思いますが、それが辞めた理由でないと思います。人生についていろいろ考えるきっかけになり、『舞台でがむしゃらに弾くことだけがピアニストじゃない』という考えに行き着いたのではないでしょうか」と分析してみせた。

この作品を通して、音楽の在り方、人生の在り方について、様々なことをシーモアから学び取ることができるが、小沼氏は、「ピアノは人間と似ている。製造方法は同じでも、同じものはできない」という彼の言葉に大いに共感したという。それを象徴しているのが、スタインウェイのセレクションルーム(ニューヨーク本社)でピアノを選ぶシーンだ。金子氏は、「数多くのピアノを前にして、チャラランと軽く弾くだけで『これは違う、これも違う』ということを繰り返し、最終的に『これだ!』と辿り着くわけですが、ピアノと弾く人間にも性格の相性があるんです。シーモアのこだわりと決断力が見られる面白いシーンですね」と笑顔を見せた。

なお、この日、『ルイ15世』と名付けられたスタインウェイの限定モデルで、リストの「ラ・カンパネラ」とショパンの「夜想曲第2番」を生演奏した金子氏。
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その美しいピアノの調べに魅了された観客から、「演奏してみてこの子(ピアノ)はどういう子でしたか?」と問われ、「芯のしっかりとした30代の女性」と表現し、会場の笑いを誘った。

◆ゲストプロフィール

ゲスト写真

小沼純一(こぬま・じゅんいち)
1959 年生まれ。早稲田大学文学学術院教授。音楽文化研究、音楽・文芸批評。「音楽文化」の視点から、音楽、映画、文学、舞台、美術など幅広い著述活動を展開し、音楽誌、文芸誌などに寄稿多数。1997 年度、第 8 回出光音楽賞(学術研究部門)受賞。主な著書に『オーケストラ再入門 シンフォニーから雅楽、ガムラン、YMO まで』(平凡社新書)、『武満徹 音・ことば・イメージ』、
『ミニマル・ミュージック』、『アライヴ・イン・ジャパン』(以上、青土社)、『映画に耳を 聴覚からはじめる新しい映画の話』(DU BOOKS)。訳書にミシェル・シオン『映画の音楽』(みすず書房、共同監訳)、マルグリット・デュラス『廊下で座っているおとこ』(書肆山田)など。坂本龍一総合監修による音楽全集「schola(スコラ)」シリーズの選曲・執筆にも携わる。

金子三勇士(かねこ・みゆじ)
1989 年、日本人の父とハンガリー人の母のもとに生まれる。6 歳よりハンガリーのピアノ教育第一人者チェ・ナジュ・タマーシュネーに師事、単身ハンガリーに留学し祖父母の家よりバルトーク音楽小学校に通う。1997 年と 2000 年に全国連弾コンクールで優勝し、2001 年には全国ピアノコンクール 9~11 歳の部で優勝。2001 年(11 歳)飛び級でハンガリー国立リスト音楽院大学(特別才能育成コース)に入学、エックハルト・ガーボル、 ケヴェハージ・ジュンジ 、ワグナー・リタの各氏に師事。2006 年(16 歳)全課程取得とともに日本に帰国。東京音楽大学付属高等学校2年に編入し、清水和音、迫昭嘉、三浦捷子の各氏に師事。東京音楽大学ピアノ演奏家コースを首席で卒業し、同大学院器楽専攻鍵盤楽器研究領域を修了。日本デビュー5 周年となる今年 2016 年 3 月に
ユニバーサルミュージックより新譜のCD「ラ・カンパネラ~革命のピアニズム」をリリース、9 月にはソロ・リサイタル「金子三勇士 5 大ソナタに挑む!」を開催する。キシュマロシュ名誉市民(ハンガリー)。スタインウェイ・アーティスト。http://miyuji.jp/index.php

『シーモアさんと、大人のための人生入門』は、2016年10月1日(土)シネスイッチ銀座、渋谷アップリンクほか全国順次ロードショー!
最新情報は、各公式サイトへ

【公式サイト】http://www.uplink.co.jp/seymour/
【公式Twitter】https://twitter.com/SeymourMovieJP
【公式Facebook】https://www.facebook.com/seymour.movie/

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イーサン・ホーク監督作、89歳のピアノ教師が教える、人生のうつくしさ
人生の折り返し地点――アーティストとして、一人の人間として行き詰まりを感じていたイーサン・ホークは、ある夕食会で当時84歳のピアノ教師、シーモア・バーンスタインと出会う。たちまち安心感に包まれ、シーモアと彼のピアノに魅了されたイーサンは、彼のドキュメンタリー映画を撮ろうと決める。
シーモアは、50歳でコンサート・ピアニストとしての活動に終止符を打ち、以後の人生を「教える」ことに捧げてきた。ピアニストとしての成功、朝鮮戦争従軍中のつらい記憶、そして、演奏会にまつわる不安や恐怖の思い出。決して平坦ではなかった人生を、シーモアは美しいピアノの調べとともに語る。「じぶんの心と向き合うこと、シンプルに生きること、積み重ねることで、人生は充実する」――彼のあたたかく繊細な言葉は、すべてを包み込むように、私たちの心を豊かな場所へと導いてくれる。

第39回トロント国際映画祭 観客賞ドキュメンタリー部門3位
第50回全米映画批評家協会賞 ノンフィクション映画賞3位
第41回テルライド映画祭正式出品
第52回ニューヨーク映画祭正式出品

監督:イーサン・ホーク
製作:ライアン・ホーク、グレッグ・ルーザー、ヘザー・ジョーン・スミス
撮影:ラムジー・フェンドール
音声:ティモシー・クリアリー、ギレルモ・ペナ=タピア
編集:アナ・グスタヴィ
出演:シーモア・バーンスタイン、イーサン・ホーク、マイケル・キンメルマン、アンドリュー・ハーヴェイ、ジョセフ・スミス、キンボール・ギャラハー、市川純子ほか
配給・宣伝:アップリンク
協力:スタインウエィ・ジャパン株式会社
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