綾野剛主演、映画『日本で一番悪い奴ら』トークイベント<第一弾>に、白石和彌監督、元兵庫県警 飛松五男氏、元大阪府警 高橋功一氏、銃器評論家 津田哲也登壇!

2日、東京・新宿バルト9において、映画『日本で一番悪い奴ら』のトークイベントが開催された。本イベントは、白石和彌監督による7月2日(土)~8日(金)7日間連続トークイベントの第一弾。

ゲストには、ミスターぶっちゃけこと元兵庫県警、警察本部捜査一課刑事の飛松五男氏、元大阪府警の銃器対策課刑事の高橋功一氏、ジャーナリスト/銃器評論家の津田哲也を迎え、道警だけでなく、他の県警でも本作で描かれるような出来事があったという実体験を披露。リアルな体験談に、笑いも交えながらも飛松五男氏、高橋功一氏の苦悩に満ちた体験に場内、真剣に聞き入った。

◆舞台あいさつ

白石和彌監督
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こんばんは。この映画を監督しました白石です。今、控室でお三方と話をしていたのですが、とんでもない話が飛び交っていました。凄い話が聞けると思います。よろしくお願いします!

元兵庫県警、警察本部捜査一課刑事の飛松五男氏
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飛松です。兵庫県から来ました。東京は凄い街ですね。よろしくお願いします。

元大阪府警の銃器対策課刑事の高橋功一氏
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高橋と申します。今、東京に住んでいるのですが、元々大阪で、稲葉さんと同じような仕事をしていました。よろしくお願いします。

ジャーナリスト/銃器評論家の津田哲也
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私、ジャーナリストで、元警察官ではないのですが、警察の犯罪と銃器犯罪をライフワークとしてやってきました。今日は、警察関係チームのお供をさせていただきました。よろしくお願いします。

◆クロストーク(抜粋)

津田:この映画、非常に評判いいんですよ。これをプロの目から観ていかがなものかの感想を頂きたいと思います。

飛松氏:リアリティーがあってね。凄いと思いました。嫁と一緒に観たのですが、嫁が黙り込んでおりまして、気に入らないのかなぁと思っておりましたら次のお好み焼きやに行った時に「いやぁ、いいわー。お父さん、あれは警察の人、みんな見なあかんよ。警察官じゃなくて家族の人が見なあかん。」と言いましたね。みなさん、どうですか。凄くいい映画でしたよね。

津田:それは反省しろという意味ですか?

飛松氏:反省しろというより、映画そのものがね凄いリアリティーがあるんですよ。僕は機動捜査隊にいたのですが、みなさんが(劇中)点数とか書いているの見られたでしょ?まさにあの通りです。管理部門についてはないかもしれませんが、警察(兵庫)のことは全部把握されています。

津田:飛松さんの感想としては、リアリティーは太鼓判ということですね。高橋さんいかがですか?

高橋氏:僕は、試写会で観た時に、綾野剛さんが主演、中村獅童が暴力団役ということで、いわゆるエンターティーメントかなということで、サラッと見たのですが、途中からフィクションではななく、ノンフィクションですよね。再現というかまるっきり私と同じ事を北海道でもやってたんだという驚きがありました。これを全部説明すると・・・これ、2時間15分ですよね?2時間15分、私、前編ですよ。後半は、3時間15分かかりますね。

津田:飛松さんからリアリティーということでは太鼓判という言葉をいただきましたが、警察と一口に言っても、部署によってそれぞれやる仕事、手法、気風も違います。劇中諸星が、まだ純粋で使命感に燃えていた頃が飛松さんのいらっしゃった機動捜査隊なんですよ。薬物の捜査をやりはじめるてグレ始めると高橋さんになるんですよ。その諸星の半生を映画にしたのが白石監督です。リアリティーということでは、僕も大変凄いと思っていますが、公開前に取材は入念にされたのですか?

白石監督:稲葉さんが手記を書かれて、そこに書いてあることをはみ出ないようにはしようとやってました。ご本人に話を聞くとのと点数がどうだったのか、機動捜査隊って何人くらいいるもんなのかは、警察OBの方に聞いたりました。稲葉さんのSさんだった方に稲葉さん現役時代どうだったのですか?とそういう話は聞きました。道警の方のお話は聞いていません。県警の方や早くにおやめになった方になんとなく雰囲気をうかがいました。

津田:機動捜査隊と当時の銃器対策課では、根本的に質が違うし、気風も違いますよね。その変遷を綾野剛さんの演技力もあるかもしれませんが、やはり監督がかなり把握されていたように思いますが。

白石監督:確かに機動捜査隊と、北海道では「暴力」って言うそうなのですが、銃器捜査隊の話は事細かに聞きました。

津田:やはりリサーチをきちんとされたので、リアルになられたのだと思います。この映画は警察の悪いところばかり描いているのですが、北海道だけが悪かったのではなく、当時の銃器対策というのが、非常に悪の温床でしたから、その例として、高橋さんどういうことをなさってましたか?

高橋氏:すべて時効にはなっているのですが、みなさんがドン引きになるちょっと手前の話で、実は、稲葉さんと私は同じ51年に拝命して警察官になったのですが、私はずっと生活安全課というところで、麻薬捜査と風俗、賭博の捜査をやってました。平成6年に国の方が銃刀法を変えるという事で拳銃の買取を警察官ができるという法律を作ったのです。その翌年に警察庁の方に、銃器対策の準備室。各県警に拳銃専門の秘匿捜査ということで、今まで暴力団の事件では押収できなかった拳銃を狙えということで私、作業に入りました。大阪府警って警察官が2万人いて、その中で選考されて6人がピックアップされました。稲葉さんが道警のエースと言われましたが、私もエースだったのかなと思います。普通に刑事として仕事しているものが、いきなりこれまでにない捜査をしろと言われても新しい係なので、前任者のやり方が一切ありませんでした。稲葉さんと僕の違いは、稲葉さんは、警察(道警)であることを表に出して暴力団に接触したのですが、僕は秘匿捜査ということで名前変えて、関西で有名な組に入りました。公務員の給料をもらいながら企業舎弟という形で入っていました。劇中同様、本部になんかしろと言われて、首なし銃(被疑者なし銃)をコインロッカーに入れ、本部に「ヤクザ辞めます」という電話をいれました。

白石監督:まったく映画と同じですね。

津田:コインロッカーに拳銃というのが、基本中の基本でしたからね。当時は、日本どこでもありましたね。映画の中では、北海道警が薬物の方を密輸しましたが、拳銃の方は未遂で終わりましたが、94年9月に、兵庫県警は61丁密輸し、事件となりました。

飛松氏:この事件、私はよく知っておりまして、僕がやったのではないですけどね。

津田:あの事件の経緯を簡単に言いますと、当時は生活安全課以前の「保安」にいた警部補が薬物密売人のSを使って、大麻20キロを運ばせ、それを捌いたお金で、拳銃61丁、500発の玉を買わせ、その拳銃を運ばせるときに兵庫県警が逮捕した事件です。兵庫県に卸せば問題なかったのですが、大阪の泉北港に卸してしまったのですね。

高橋氏:その時、僕はそこで銃器対策でしたからね・・・。

津田:あれは大阪の人達怒りましたね。大阪税関の人達も怒って、Sを指名手配。兵庫県警は二年近く匿っていたというとんでもない話ですよね。

飛松氏:まさにその通りですね。僕がこの前、映画を観に行った時に、たまたま元警察の者も話しかけてきました。自分も似たような体験があったと。映画をごらんになったみなさんは、白石監督、あんなんどないになっとるのやと思うかもしれませんが、ほんまに事実なんです。これ、私が言うのは、警察を批判するわけではなく、僕は、警察が大好きです。僕も含めてそういう時、ちゃんと一歩踏みとどまって、それをクリアして、家族と共に普通の生活をおくれるようになった。警察官、警察の家族の人にも観てもらいたいです。その為に監督はこの映画を作ったのではないかと僕は信じています。

津田:白石監督の素晴らしいところは、この映画で悪と善をしっかり線引きしてないところ。どこかのメディアで監督おっしゃっていましたが、人間100%の善も悪もないということですね。その辺りは混沌としたイメージで捉えていらっしゃると思います。ここを勧善懲悪的に作ってしまうと映画として成立しないところがありますよね。

白石監督:僕は映画の中で、国松長官を描写していて、そこは本当に申し訳なかったとずっと思っていましたが、さっき控え室で色んなお話を聞いて、北海道警悪いって思ってのですが、まだまだ悪いところもあって、あと何本映画撮れるんだって驚愕の事実でした。ただ、これは警察の話だけではなくて、組織が生まれたばかりの時って民間でもこういう事ってどこでもあって、どこか普遍的な話だったりします。この映画がどこか教訓になってくればいいなという想いもこめ、飛松さんも言って下さったのですが、全国30万人警察の方いますので、是非、この映画、警察官の方も家族の方と観て語り合って欲しいなと思います。今日は、ありがとうございます。

映画『日本で一番悪い奴ら』は、全国公開中!
最新情報は、『日本で一番悪い奴ら』公式サイトへ

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映画『日本で一番悪い奴ら』
出演:綾野剛、中村獅童、YOUNG DAIS、植野行雄(デニス) 、ピエール瀧
監督:白石和彌
脚本:池上純哉
音楽:安川午朗
原作:稲葉圭昭「恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白」(講談社文庫)
配給: 日活
©2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会

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