映画『ブランカとギター弾き』トークイベントに、長谷井監督の20年来の友人加瀬亮登壇!

8月9日(水)、東京シネスイッチ銀座にて『ブランカとギター弾き』のトークイベントが開催され、本作の監督を務めた長谷井宏紀監督と、長谷井監督と以前から親交のある俳優の加瀬亮さんが登壇した。

本作は、日本人として初めてヴェネツィア・ビエンナーレ&ヴェネツィア国際映画祭の全額出資を得た長谷井宏紀(ハセイコウキ)監督がフィリピンを舞台に撮影し、世界中の映画祭で高い評価を得た話題作『ブランカとギター弾き』がシネスイッチ銀座ほかにて7月29日(土)より全国順次公開中。

舞台はカラフルでエネルギーに溢れたマニラのスラム。YouTubeの歌姫として国内外で人気を集めていたブランカ役のサイデル・ガブデロは演技初挑戦ながら、美しい歌声と演技力で観る者を強く惹きつけます。彼女に生きる術を教える盲目のギター弾きには、生涯を通して実際にフィリピンの街角で流しの音楽家として活躍していたピーター・ミラリ。その他、出演者のほとんどは路上でキャスティングされています。そして劇中、演奏されるスペインをルーツにした素朴で温かいフィリピン民謡「カリノサ」は必聴。母親を買うことを思いついた孤児の少女ブランカと、盲目のギター弾きの“幸せを探す旅”。本作はどんな人生にも勇気を持って、立ち向かう価値があることを教えてくれる、心温まる感動作。

上映後、感動の渦に包まれた場内に加瀬亮さんと長谷井監督が登壇。加瀬さんは「こんばんは。宏紀くんとはほぼ20年付き合いがありますが、商業映画での初監督ということで駆けつけました。宜しくお願いします。」 長谷井監督は「お忙しいところ、わざわざありがとうございます。」とそれぞれ挨拶をした。
加瀬さんは長谷井監督との出会いを振り返り「昔、宏紀くんは大きな一軒家に住んでいて、その家にミュージシャンやデザイナー、写真家、絵描き、いろいろな人が集まって暮らしていました。面白いとの噂で僕も遊びに行ったら、年中、家の扉が開けっ放しなんですね。誰もが出入りできる場所を作っている宏紀くんに会って、朝から夜までいろいろなことを話していました。懐かしいですね。」と語る。「彼が作った初の短編映画では僕はスタッフとして参加しています。今回は初の長編監督ということですけど、彼がフィリピンで撮った短編作品を2本観ているから、初めてという気がしませんでした。ただ今作は、はっきりとしたストーリーがあったので、彼が「何を信じたいのか」がよく見えました。いい作品だと思います。どのようにこの物語を紡いでいったのだろうと非常に興味を持ちました。」と話した。一方、製作に至るエピソードについて長谷井監督は「まずはエミール・クストリッツァ監督に出会って、彼の家に2年間滞在し、脚本を書くことを学んだ。そこで、目をかけてくれていたプロデューサーが亡くなったりして、一旦はプロジェクト自体が止まってしまった。だけど、ヴェネツィア・ビエンナーレ主催のシネマカレッジに応募したこと、その場を通じて、多くの仲間たちに出会ったことが大きかった。」と振り返った。


続いて長谷井監督がフィリピンに興味を持ったきっかけを、「ある友人が撮ったモノクロのスモーキーマウンテンの写真を見て、行ってみたいという好奇心が芽生えた。実際は、彼が捉えた美しさとは違った美しさ、特に子供の力に魅了された。かっこいいと思うと同時に、この美しさを他の人と分かち合いたいなと感じた。」と語り、加瀬さんは「最初に撮ったフィリピンの短編は、とても衝撃的でした。その次の作品には今作にも出ているピーターが出演しているね。だから『ブランカとギター弾き』は僕にとって、ある意味では繋がっている。フィリピンに行って、スラムの人に出会って、宏紀くんはきっと何かが吹っ切れたんだね。具体的に何があったのか気になるな。」と質問。長谷井監督はそれに答えて「ある時、サーフィンしている子どもがいたんだけど、なんとサーフボードが冷蔵庫の蓋だったんだよね。その自由さとかエネルギーとか、サーフボードを手に入れて波に乗るっていう発想ではなくて、そこに冷蔵庫の蓋があったから波に乗る、という行為に衝撃を受けたんだよ。」とスモーキーマウンテンで出会った少年を振り返った。
実際に撮影が始まると、様々な困難はあったが、「結局はその前にある波に乗るか?乗らないか?だよね。」と長谷井監督は話す。「クライマックスのブランカが泣いて笑うという演技は、やはり11歳の女の子には難しいことだった。そのシーンは最終日に撮ったんだけど、カメラを回しっぱなしにしたまんま、助監督が「今回の撮影を振り返って」という思い出話を、ブランカ役のサイデル(・ガブテロ)にするんだ。すると、彼女は思い余って涙が出ちゃう。でも、同時に笑いは起きない。そんな中、スタッフのみんなが彼女を囲んで歌って踊り始めた。ジョークを交えたりしてね。とても良い雰囲気だった。そして、とうとうサイデルが笑いだすんだよね。僕自身は、こんなに幸せなことないって思って。なかなかカットがかけられなかった(笑)」と撮影中のエピソードを振り返った。
加瀬さんも自らの経験を振り返り、「映画ってひとりではできないし、演技経験があっても無くても一緒だと思う。泣くってシーンがあっても、周囲や自分がそういう雰囲気ではなかったら、やっぱりすっとは泣けないんだよね。経験があるからとか、技術があるからとは違う。人間が普段、涙を流す時って、“泣くもんか”や“泣きたくない”っていう気持ちがあるはずだし。だから、無理矢理に流した涙や笑いは、やっぱり画面の中でも見えかたが変わってくると思う。」と演技に関して語った。
長谷井監督は、今後の監督作品に関して聞かれ「沖縄でも撮影してみたい」と話し、加瀬さんも「俺も沖縄に行ったことがあるけど、この作品に出てくる子供たちと同じくらいパワーがすごい。撮影後に待ち伏せされていて、水鉄砲でビショビショにされた。俺もやられたのと同じくらいビショビショにし返したけど。(笑)」と沖縄での撮影のエピソードを振り返った。
20年来の友人であり、同い年である二人の話は大いに盛り上がり、最後に加瀬さんが「話し込んでしまってすみません。今日はありがとうございました。これからも長谷井宏紀を宜しくお願いします。」長谷井監督も「ご来場ありがとうございました。加瀬くんも来てくれてありがとうね。」と予定の30分を越えてイベントは幕を閉じた。

 

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